2010年11月7日日曜日

第8回定例会レビュー 『株式市場から見た日本の将来』

第8回(2010年10月)定例会レビュー『株式市場から見た日本の将来』(古川)

古川は証券会社にて日本株市場のアナリスト業務を担当。
今回、古川は、日本が抱えている問題、それを解決する施策を考察するために、「株式市場から見た日本の将来」を発表した。(つづく)


東証の時価総額は9月末で世界第4位とベスト3を外れた。現在、外国人投資家の日本株の売りが加速しており、保有でいえば外国人投資家の比率は28%にとどまっている。この原因には、円高、国内デフレ、原料高、日本企業の収益性の悪化という経済的問題と税制規律、不安定な政治、成長戦略の欠如という政治的問題の両方が考えられており、金融危機後、日本株の回復の出遅れは顕著である。これらを受けて、現場では、日本の位置付けが「世界第二位の経済大国日本」ではなく「アジアの一部へ」と変わってきており、HQの東京から香港やシンガポールへの移行が進み、スモールハウスの日本株拠点撤退が続いている。投資家の間では、「日本株だけでは、食べていけない時代」という認識が広がっている。

とはいえ、日々の売買でいえば、まだその60%が外国人投資家である。外国人投資家の日本に対する見方、投資に対する考え方を理解することが、日本株市場を復活させることができるのではないか?

株式市場は実体経済(の未来)を映す鏡である。株式市場を見れば、今日本がどのような問題を抱えていているかが分かる。
投資家は、個々の企業の成長性はもちろんのこと、日本の政治経済運営体制全体(法人税率、少子高齢化への具体的な対策不足等)、を見て日本の企業に投資している。
そして、株式市場の停滞は国の経済、社会に対して悪影響を与える。
具体的には、日本株で運用されている年金資産の目減り、企業の財務状態の悪化、設備投資の減退など、経済活動全体に対して成長性、安定性をそぐマイナスの影響があげられる。
 
しかし、この悪循環は断つこともできる。例えば、イギリスは財政赤字や経済不況など日本と同じような状況にあるが、将来価値が高いため格付けは日本よりも上である。その理由は、政治がそのような問題に対する具体的な方策をアナウンスするからである。日本政府は曖昧模糊としたまま将来に対する明確な指針を明らかにしない。このことは外国人投資家の投資意欲をそぐことにつながっている。

それでは、自由な市場を前提に、公共の視点から何ができるのか?日本の未来のために、何をすべきなのか?

政府は所得分配の「原資」の創出に腐心すべきであり、企業そして個人はもっと海外へ出で世界市場の中で利を競うべきだと考える。また、国民が世界の中で日本の正しい位置付けを把握し、もう一度他国から学ぶ姿勢、そして発信をすべきである。これはつまるところ、国民が「どういう国にしていきたいか」について興味と責任を持つことに他ならないのではないか?

待山コメント:
この問題に対する対応策は二つある。
一つが、株価・金融という観点から考えることである。規制を緩くして、英語開示、適時開示(timely
disclosure)を可能とすること、そして、使用言語を英語に統一することである。このような制度的な問題はよく論じられることであり、これらはわれわれの力ではどうしようもできないことも現実である。
そこでもう一つの方策、株式市場のプレーヤーの強化という観点で考えることが大事なのではないか。株式市場の制度を工夫したところで強いプレーヤーがいなければ投資意欲は駆り立てられない。そこで、起業家を育てる仕組みが必要なのだと思う。


桑山コメント:
これらの問題を解決するときに、まずは、企業から見たとき内性変数なのか外性変数なのかを仕訳ける必要がある。外性的と思われる制度の問題や政策的な問題は、既に多くの人たちがチャレンジしている分野であり、他の人がすでに気づいてやっていることだ。問題を提起するだけでは解決されていかないという現状あり、それが問題だということで始まったこの会が同じことをしても意味がないと思う。この会が持つ問題意識は、同様の成果物を出したところで解決できるようなことではない。『一目置かれる日本』という目標に向けて何が必要なのか、どういう日本になってほしいのかを考え、他の主体の成果物を参照しながら小さなところから実践し輪を広げていくという方針が必要ではないか。日本の学生の質が低いと思ったとして、なぜ学生の質が低いのかを話し合っても意味がないと思う。学生と直接対話するなどして、生情報にアプローチすることからしか、問題意識への糸口はつかめないと思う。

たとえば、移民についていうならば、中東の国は、ここで出たようなアメリカの考え方とは全く違う捉え方をしているが、結局は一目置かれているのではないか。
仮に、素晴らしい考えを持つ国を参考にしたとして、その考え方を真似して日本が一目置かれるようになるのか。知っていることは重要だが、他の国を称賛したり、それをまねるということは、最初に危機感を持った4名の感覚に対する解決にはならないのではないか。他の国ではどうなっているかを知り、それはそうとして自分たちの国では、どうしたらいいかを考える。という二つのプロセスが必要ではないのか。そして、後者のプロセスを念頭において議論を始めなければならないのではないでしょうか。

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